実践から学ぶ児童虐待防止

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更新日 2012-01-30

子どもの福祉・問題

jidogyakutai.jpg実践から学ぶ 児童虐待防止

谷口卓・末光正和 編著
A5判/並製 1995円(税込)
ISBN:978-4-7614-0702-5


全国的組織として活躍するCAP、小学校・高校、児童相談所などの取り組みを紹介。子育て支援の問題からも虐待防止を提言する。

●目次
第1部 児童虐待防止の実践
第1章 児童虐待をめぐる問題●谷口 卓
児童虐待の現況
児童虐待防止の観点
児童虐待とDVとの関連性
児童虐待防止ネットワークの現況
児童虐待防止への取り組み

第2章 実践1 CAPの取り組み1
    — 自治体との連携—●浮穴正博
私自身もすくわれた気がします
「SAFE・STRONG・FREE」と「NO・GO・TELL」
いじめ・登校拒否ゼロキャンペーン〜「いじめ」を斬る! 
CAPとの出会い
おとなワークショップの展開
子どもワークショップ・幼児ワークショップの展開
相次ぐ問い合わせ
富田林市でのCAPの進化
幼・小・中のCAPライン
CAPは……

第3章 実践2 CAPの取り組み2—民間の教育プログラム—
● とみながとも子 協力:NPO法人CAPセンター・JAPAN
CAPとは
CAPの歴史
CAPの基本的な考え方(3つの柱)
CAPプログラムについて
子どもへの暴力防止に取り組む民間の課題と展望

第4章 実践3 小学校の取り組み
    —子どもを虐待から守る学校づくり—●増田利之
児童虐待の現状と課題
子どもを虐待から守る学校づくり事業
児童虐待対応先進国のアメリカ合衆国イリノイ州シカゴ市の取り組み
学区内に児童養護施設を有する学校の管理職として

第5章 実践4 高校の取り組み
    — 親になるための準備—●内田正俊
高校生と児童虐待
総合(チャレンジ)の授業
傍観者から当事者へ
子どもの立場から親の立場へ
近い将来、親となる自分
虐待予防 — 加害者となる想定から —

第6章 実践5 児童相談所の取り組み
    —虐待家族への支援—●菅野道英
児童相談所での活動
児童相談所の戸惑い
家族に介入する目的
対立の構図
パターナリズムとインフォームド・コンセント
制限下でのパートナーシップ
関係性が良好≠子どもの安全
家族へのストレングスアプローチ
虐待家族の支援のプロセス
告知と認知
保護者との共有
選択肢の提供
ストレングスに注目した介入的面接
セーフティプラン
再統合のための課題
安全な養育の実現のために

第7章 児童虐待防止をめぐる現代的課題●末光正和
虐待問題の問い直し
ネットワークの問い直し
今後の課題

第2部 児童虐待防止と子育て
第8章 児童虐待から現代的子育てを見直す●服部次郎
虐待発生の原因を探る
虐待の意味するもの
現代的子育ての本質の見直し

第9章 児童虐待防止と子育て支援●山田勝美
深刻化する児童虐待をいかに捉えるべきか
国家対策としての子育て支援
現代家族の特質と子育ての困難さ
今後の子育て支援の方向性
互いが支え合う仕組み

●推薦文
 日本における児童虐待に対する視点と支援が新たな段階の時期に入ってきた

 第1部では、民間機関CAPの10年に及ぶ実践に注目したい。それは子どもの三つの権利「安心・自信・自由」の保障は、同時にこれらの権利を保障されずに育ってきた親への保障という視点と取り組みに同感する。これは虐待家族の痛切な叫びに応えるもので今後の実践に期待したい。
 児童養護施設で体験学習をした高校生の感想「めちゃ元気やったケド、淋しがりやなんやろなって思った」と同時に「親も辛かったやろなあと思う・・・・・・。けど子どもと楽しく暮らしてほしい」という高校での実践も感動的である。
 また、少ない専門職員の児童相談所がマスコミ批判の矢面で、“毎日夢に出てくる児童虐待”の修羅場で苦闘する職員の保護者支援 —「支援のためには関係性は良好に保ちたい」と「子どもの福祉を考えたら関係の悪化はいたしかたない」との拮抗は身をつまされる。
 「児童虐待防止をめぐる現代的課題」での提起も、私が児童相談所で地域の児童・家族問題を取り組んだ実践とも重なり共感できる。一つに「三層構造」の提起である。これは「虐待を起こす可能性のある家庭」がいつでも「虐待を起こす家庭」に転化すること、「虐待を起こさない家庭」をも巻き込む可能性を指摘している。二つに、障害者運動の「ノーマライゼーションの形成過程の特徴」から学び、児童虐待ネットワークへの問い直しの視点である。

 第2部の「児童虐待から現代的子育てを見直す」は、「子育て期間を親が親になるための期間」として、育児と仕事を両立させる制度保障の取り組みの必要性を説いており、これに同感である。一方「児童虐待防止と子育て支援」は、資料を基に児童虐待と貧困にメスを入れリアリティである。
 多くの虐待家族は貧困を抱え、子育て支援は生活支援でもある。今後、格差社会の“生きづらさ”の中で虐待を起こす(可能性のある)家族が抱えている生活問題も視野に入れた実践の展開に期待したい。

日本福祉大学教授 加藤 俊二

*所属は刊行時のもの

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